今年の武道学会は、東京学芸大学です。ちかいのでうちの道院から若者のひとりを加えて、二人で参加です。ただのAudienceですよ!!
IA-4 剣道試合における姿勢欠点判定性の導入検討
姿勢の判定というのは、ルールギリギリ、違反でないけど勝つためにちょっとみっともないアクションのことです。立ち居振る舞いみたいなもんでしょう。あくまでルール違反ではないのですが、どうしてもルールを制定するとグレーゾーンは必然的に発生しますからね。剣道でも有効打突以外の判定システムを幾度が導入されたことがあり、古くは大正時代(1920)、最近では1984年の32回大会から39回までも導入されていた模様。
しかし近年のものに関しては、
>徐々に判定性を意識した小手先の技や見せかけの姿勢・態度による剣道本来の有効打突を競う醍醐味が失われた
ということで廃止に。
32回導入当初は、判定試合率が3.5%だったのに対して、最後の39回では20.6%に。1/5が判定試合になってしまったということです。
あと審判の負担が大きいことも原因の一つだとか。
少林寺拳法の大会にも、演武6構成(60点)と40点のこの姿勢判定に近い項目があるわけですが、いまのところうまく機能していると思います。剣道は自由攻防ですから全く比較する対象にはならないのですが、剣道にもこのようなムーブメントがあったことに感銘を受けます。
私が中学校で弱小剣道部を楽しんでいたころ、こういう動きがあったんですね。
IIB-3 柔道競技における身長差と試合結果の関係
2017年の全日本学生柔道体重別選手権大会の結果より身長差と勝利方法の関係を見ると、- 高身長は技勝ち、が有意に多い
- 低身長は罰則勝ち、が有意に多い
- 男子は低身長勝ちに手技、が有意に多い
- 男子は低身長勝ちに足技、が有意に少ない
- 女子は高身長勝ちに絞め技、が有意に多い
- 女子は低身長勝ちに手技、が有意に少ない
もう少しあるんだけど一部抜粋で。言われてみれば当たり前だけど身長の高低で決まり技に差異があることがわかる。のでこういうデータが沢山集まれば、指導の段階で優先する技を絞ることが可能になる。
少林寺拳法も法形が山のようにあるので、すべてをフラットに万遍なくやることも大事だけど、得意技はあっても良いと思いますし、むしろあるべきだとも思います。その選択においてなにかこういう指標があってもいいなと感じたのでした。
IIA-6 昭和戦前期における「武術としての柔道」論の展開:当身技の研究に着目して
日本武道会の雄、嘉納先生は生涯に渡り「武術として柔道」を研究されており、その中で当身は重要な位置づけとされていた。柔道家が当身技を習得できるように、生涯最後に創案した型が「精力善用国民体育」。柔道の演武で当身をしているのは何度かみたことがあるなぁという程度。そんな型があるとはしりませんでせした。YOUTUBEででてくるだろうと思ったけど以外にもあまり出てこず。
私としましては、当身というよりもやはり嘉納先生の武術・武道への考え方というてんに関心がわきます。
「主として投と當でなければならなぬ」1918
「身體を自由自在に動かし、機敏に當てもすれば投げもすることの出来るやうな修行」1918
「当身を欠いた武術は、不具の武術である」1931
「對手の急所を打ち、突き、蹴りなどして對手に苦痛を与へ、自由を失わしめ、又は死に至らしめる方法」1931
嘉納は当身技として7技を示していた。以後も多くの柔道家によって研究されるも実戦的当身技の基本としては物足りなさも感じられ、空手なども研究されていたようです。
その後、著名な富木謙治氏や南郷次郎氏も研究。
発表後の質疑によると、どこかの古い雑誌に「ボクシングは柔道のひとつである」といったような嘉納先生の言葉が掲載されている模様? す、素晴らしい・・・・
やはり武術を学ぶものはこのような幅広い見識や関心が必要なのだと感銘を受けます。
その他細かいこと
- 他にも、剣道八段位の合格者数・合格率などが具体的に見られたことや女性剣道七段位の同様な統計も見られました。八段位の合格率は噂通りの1%付近。
- 「生涯武道の現状とこれから」というシンポジウムがあり、各分科会(柔道・空手道・剣道・弓道・なぎなた・障害者武道)から現状の発表があり、他の武道においても、2000年以降今日人口が減っているという統計資料が具体的な数字を伴って見れた。
少林寺拳法においても某2004年に一つの境があると思われていたが、その減少率が他の武道と比べて差があるのかないのか、あるならどの程度なのかは検討しても良さそう。とにかくどこも顕著に減っている。
その他発表内では、女性の率や海外での展開も報告されています。 - 剣道などの発表によると、県単位での女性指導者育成や稽古会などが活発な県は女性剣士がおおいとか。女性のみの大会で審判も女性のみで開催できるまでに現在増加中。
- 障害者はいま日本の人口において、7.4%。武道を学ぶ人はおよそ4%ほどと言われており、実は障害者よりもマイノリティであるということ。しかしたとえば、柔道の場合、視覚障害者の柔道家は0.0004%にとどまる。
- 海外の障害者武道に関してだけど、彼らの側にこのような発言というか意識があるとか。
「我々に組織はなく、あるのはネットワーク」もちろんインターネットを介していろいろしてるわけだけど、これはなかなかにおもしろい。学会では「中心のないつながり」と表現されていました。横のつながりて感じかな。 - よくわからないのだけど、組織的には所属してないけど柔道は続けている「のら柔道家」という層がかなりいるのではないかとのこと。確かに都内某スポーツセンターにもそれらしき人はかなりいる。いや所属はあるのかもしれないが。
実は大会や昇段さえ気にしなければ、のらで武道をやる環境は、東京にはかなりあるのよね。キックとか総合も特別な選手クラスでなければ結構ある。
ちなみに次回は、
2019年9月5日(木)~9月6日(金)
國學院大学たまプラーザキャンパス
ですね。また関東です。是非一緒に行きましょう!!
武道学会では、第一に柔道・剣道・空手、次に弓道・なぎなたの研究者が多く見受けられます。少林寺拳法は基本皆無かなと。以前理事としてお越しになっていた新井先生のお話によると、本部職員の方々にはけっこう学会員がいるとのことでしたが、学会ではお見かけできず。
武道学会は興味深い、おもしろい場なのでもう少し拳士が入ればいいのに、と毎回思います。
武道学会は興味深い、おもしろい場なのでもう少し拳士が入ればいいのに、と毎回思います。